ミニなSUV MINI CROSSOVER

現在、MINIの親会社であるBMWは元々航空機やバイクのエンジンを開発する会社でした。
そのため「シルキーシックス」と呼ばれる直列6気筒を始めとする「BMW製エンジン」について語られることは少なくありません。
一方MINI(クラシック・MINIも含む)については、その愛らしいキャラクターや「ゴーカート・ライド」と呼ばれる独特の乗り心地について言及されることはあっても、エンジンについて語られることはあまりありません。
そこで今回はクラシック・MINIと現行MINIの「エンジン」に注目し、お伝えしようと思います。


クラシック・MINIのエンジン

クラシック・・MINI(以下・MINI)のエンジンは、クーパー、クーパーSも含め、すべて「Aシリーズ」と呼ばれるエンジンが元となっています。

Aシリーズエンジンとは?

Aシリーズエンジンとは、・MINIを製造するBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)が生産していた小型車用のエンジンです。元々はBMCとして合併する前のオースチンでエンジニアをしていたハリー・ウェスレイクによって開発されたエンジンで、BMCとなってからは小型車向けの「標準エンジン」とされていたものになります。

オリジナル・・MINI

水冷4気筒848ccで、34psを発生。
実は・MINIの生みの親アレック・イシゴニスは当初、・MINIのコンパクトなエンジンルームにAシリーズエンジンを詰め込むことは無理と考え、エンジンをカットして2気筒化することも検討していたといいます。しかしBMCのレナード・ロード会長の「既存のエンジンのラインナップでやりくりせよ!」という鶴の一声でそれを断念。結局エンジンの真下にトランスミッションを配置する「イシゴニス・レイアウト」を考案し、何とかAシリーズエンジンをエンジンルームに収めきったのです。

クーパー用エンジン

MINI・クーパーを開発した天才エンジニア「ジョン・ニュートン・クーパー」はAシリーズエンジンに手を加え、MINIにレースで戦える戦闘力を与えました。

  • ショートストローク化した998cc
    エンジンの排気量はボア(シリンダーの直径)×ストローク(シリンダーの長さ)で決まります。ジョン・クーパーはAシリーズエンジンのストロークを増やして排気量を997ccにまでアップ。SUツインキャブレーターを採用してオリジナルの34psから55psへとパワーアップに成功します。
  • ショートストローク化した998cc
    ただロングストローク化するとエンジンの回転数を上げにくくなるため、今度は(ボアをアップして)ショートストローク化。排気量を998ccとして「高回転型」エンジンに仕立て上げます。

クーパーS用エンジン

パワーアップを果たしレースで活躍する・MINI・クーパーはバックヤードビルダーと呼ばれる街のチューニングショップたちを刺激します。彼らはAシリーズエンジンから極限までパワーを絞り出すことに心血を注ぐのです。

  • Aシリーズの限界まで
    1963年に発売されたクーパーSのエンジンは1071ccで67ps。これはAシリーズエンジンのボア×ストロークを最大限拡大したもので、最早限界に達したといわれていました。
  • 限界を超える!
    その限界に挑戦したのがバックヤードビルダーのダウントン・エンジニアリング社を率いる「ダニエル・リッチモンド」でした。リッチモンドはボアのピッチを「ずらす」という裏ワザを考案。排気量を1275ccと大幅に増やし、75馬力にまでパワーアップすることに成功します。この1275ccのクーパーSは大好評を得、1971年までに40,000台以上が生産されるヒットモデルとなりました。

MINIのエンジン

新世代MINIのエンジンは、「エンジン屋」であるBMW主導の下、現代の車らしく他メーカーとの共同開発が多くなっているのが特徴です

第一世代(R50・R52/R53)

  • トライテック・エンジン
    第一世代のMINIのエンジンはBMWとクライスラーの合弁会社、トライテックが製造した通称「トライテック・エンジン」です。90psの・MINI・ワン用から、スーパーチャージャーを装着して163psを発生するクーパーS用まで3種類のラインナップがありました。

第二世代(R55・R56・R57・R58・R59・R60・R61)

  • コードネーム「Prince」
    第一世代はアメリカのクライスラーとの協業でしたが、第二世代ではフランスのPSAグループ(プジョー・シトロエン)とタッグを組みます。コードネーム「Prince」と呼ばれるこのエンジンは、プジョー207・307、シトロエンC3・C4等と共にまずはクーパー、クーパーSに搭載されます。クーパー用はBMWのバルブトロニック技術を採用した120psを発生するNAの1.6L、クーパーS用はやはりBMWのツインスクロール直噴ターボ技術を採用し175psを発生。その後ミニ・ワン用の1.4L(95ps)とクーパーD用の1.6Lターボディーゼルも追加されました。

第三世代(F54・F55・F56・F57・F60)

第三世代が発売された2014年になると、BMWでも「2シリーズ アクティブ・ツアラー」などのFF車が登場し、BMWとMINIでエンジンを共用することが可能となります。すると効率化のためエンジンはモジュラー化され、1気筒あたり500ccを組み合わせる形式へ。
クーパー用は1.5L 直列3気筒ターボエンジンで最高出力136ps/4400rpm、最大トルク22.4kgm(オーバーブースト時は23.5kgm)/1250-4300rpm
クーパーS用は2.0L 直列4気筒ターボエンジンで最高出力192ps/5000rpm、最大トルク28.6kgm(オーバーブースト時は30.6kgm)/1250-4600rpm
をそれぞれ発生します。

  • MINI史上最強のJCW用エンジン
    最強のMINI、JCW(ジョン・クーパー・ワークス)に搭載されているエンジンは、クーパーSと同じく2.0L 直4ターボエンジンではあっても中身は別物。専用のピストンや強化されたクランクシャフトがおごられ、ターボも新設計されているのです最高出力は
    クーパーSを100ps以上上回る306ps /5000rpm!最大トルクは450Nm/1750-4500rpmを発生します。
    クラシック・・MINIのクーパーSが75psですから、50年以上が経っているとはいえ、そのすさまじい進化に驚嘆です。


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