ミニなSUV MINI CROSSOVER

MINIが生まれた1960年頃、イギリスには「バックヤードビルダー」と呼ばれるハンドメイドでクルマを製作する技術者集団が数多く存在しました。彼らはベースとなるクルマのエンジンを載せ替えたり、FRPなどで製作したボディをかぶせることで「別のクルマ」にすることができるキットを販売していたりしたのです。そんなバックヤードビルダーたちに人気を博し、多くの派生車を生み出したのが当時デビューしたてのMINIでした。
今回は、

といった内容をお伝えしてまいります。


バックヤードビルダーとは?

市販の車の開発には莫大な資金が必要です。では資金がなくても車が作りたい場合はどうするか。そんな時は市販の車のエンジンやパーツを取り替えてオリジナルの車を作るのが早道となります。それがバックヤードビルダーと呼ばれる技術者集団というわけです。

Morris Mini Minor

ジョン・クーパーもバックヤードビルダーだった

実はMINI・クーパーの生みの親、ジョン・クーパーの実家もバックヤードビルダーでした。彼の父親のチャールズ・クーパーは市販車のパーツやエンジンを使ってオリジナルのクルマを製作する工房を持ち、ジョン・クーパーはそんな環境の中で育ったのです。また有名なところではF1等でも有名な自動車メーカー「ロータス」の創始者、コーリン・チャップマンも、創業時はバックヤードビルダーだったことが知られています。

オースチンとナッフィールドが合併しBMCが

MINIにはバックヤードビルダーたちを惹き付ける多くの魅力がありました。当時のイギリスでは自宅のガレージでクルマを整備して、草レースに出場するカーマニアがたくさんいました。バックヤードビルダーはそんなカーマニア相手にパワーアップしたエンジンやパーツを提供したり、

  • ベースとなる車
  • 様々なパワーアップパーツ
  • FRPなどで作ったオリジナルのボディ

を組み合わせ、ユーザーが自分でクルマを組み立てることのできる「キットカー」を販売していたのです。ただ草レースに出場しようと購入するユーザーが多かったため、ベースとなるクルマには「優れた運動性能」が必要でした。その点MINIはベース車にピッタリだったのです。

ジョン・クーパーも注目した切れの良いハンドリング

MINIクーパーが生まれたのは、ジョン・クーパーがその切れの良いハンドリングに注目したことがきっかけでした。カーマニアたちにレーシーなキットカーを提供しなければならなかったバックヤードビルダーたちも、ボディの4隅に小径のタイヤを配置するMINIの、まるでゴーカートのような鋭いコーナリングと運動性能に目をつけたというわけです。

小型のボディは改造車のベースとして最適だった

またMINIの市販車としては最小クラスの小型のボディもバックヤードビルダーたちに都合の良いものでした。大きな車のボディを載せ替えたりするのはコストがかかってしまいますし、お得意様であるカーマニアたちは自宅のガレージでキットカーを組み立てたりするわけですからコンパクトな方が都合が良いというわけです。

モンテカルロ・ラリー連覇などレースでの活躍

バックヤードビルダーからキットカーを買って草レースに出場するカーマニアにとって、ベースとなるクルマがレースで活躍することは非常に嬉しいことです。その点MINIはモンテカルロ・ラリーで1964~1967年の4年間の間に3回の優勝(※1966年は規則に適合しないライトの使用で失格とされた。実質的には4年連続の優勝である)と無敵の強さを誇るなど、レースシーンで大活躍します。「あのモンテカルロ・ラリーで優勝したMINIをベースに草レースで戦える!」バックヤードビルダーの顧客たちはそう熱狂したのです。


ジャガーを吸収してBMHへ

MARCOS MINI GT

MINIをベースとしたキットカーで最も有名なのが「マーコス・ミニ」です。MINIのパワートレインとシャシー、足回りを用い、そこにロングノーズ、切り落とされたようなリアという個性的なFRP製のボディを載せました。そして数々のレースで活躍し、1966年のル・マン24時間レースでは英国車で唯一完走を果たすという快挙を成し遂げています。

ROB WALKER MINI SPRINT

とにかく「軽量で速いMINIを作る」ということを目標に、F1ドライバーだったロブ・ウォーカーが開発したのが「ミニ・スプリント」です。全高を低くすることで前面投影面積を小さくし、空気抵抗を減らしました。また全高を低くしたことは軽量化にもつながり、大幅な走行性能向上を実現します。

OGLE SX1000

オーグルデザインから発売された「SX1000」は、レーシングカー指向の強いMINIの派生車の中では珍しいグランツーリスモ的なモデルでした。内装も大型車のジャガーなどを思わせるもので、「小さなGTカー」と呼ばれました。

UNIPOWER GT

ロータス・ヨーロッパやランボルギーニ・ミウラといった市販ミッドシップカーに先駆けて発売されたのが「ユニパワーGT」です。角形断面鋼管のスペースフレームに軽量なFRPボディをかぶせ、クーパー、クーパーSのエンジンを「ミッドシップに搭載!
4輪独立懸架サス、ラック&ピニオン式ステアリングなど、高機能モリモリの名車でしたが、あまりに高価になってしまったため、販売台数は伸びませんでした。

【番外編】 “MANE”COOPER

MINIにサイズも雰囲気も似ているといわれたホンダN360のフロントやフェンダー部分をMINI風に改造したのが「MINIを真似した“MANE”COOPERです。完全に洒落の世界ですし、バックヤードビルダーが製作したMINIベースのクルマという今回の趣旨からは外れますが、現在でも愛好家がいらっしゃるようで、特別にここでご紹介いたします。

派生車が多いのは高性能+人気がある証拠

これほどまでにバックヤードビルダーたちを惹き付け、多くの派生車を生み、ユーザーに愛されたのは、ベースとなるMINIに優れた運動性能と絶大なる人気があったからです。今回ご紹介した派生車を街で見かけたら、「ああこれもMINIがベースなんだ!」と思いを馳せてみてはいかがでしょうか。



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