ミニなSUV MINI CROSSOVER

クラシックM INIといえばキビキビとした「ゴーカートライド」と呼ばれる乗り味が特徴的でした。
しかし一方で「ちょっとゴツゴツする」「路面からの突き上げが強め」といった声があったのも事実です。
しかしそんなクラシックM INI、「魔法の絨毯」と呼ばれるほどフラットな乗り心地を実現したモデルがあったのをご存じでしょうか。
今回はミニのファンにも意外と知られていない「ハイドロサスペンション」を搭載したククラシックM INIについてお伝えしようと思います。


ハイドロサスペンションとは?

ハイドロサスペンション、略してハイドロなどと呼ばれますが、正式な名称は「ハイドロニューマチック・サスペンション」といいます。ではこのハイドロニューマチック・サスペンション(以下ハイドロと略す)とはどんなサスペンションなのでしょうか。

シトロエンが開発した「魔法の絨毯」

ハイドロはフランスの自動車メーカー「シトロエン」が開発したサスペンションシステムです。1954年、同社のトラクシオン・アヴァン(前輪駆動の意) 15 Sixのリアサスペンションに試験的に導入され(後輪は荷物を積むために車高が下がりやすく、それをフラットに保つために導入されたと思われる)、翌1955年に発表されたシトロエンの旗艦「シトロエンDS」に正式採用されました。その乗り心地は「マジックカーペットライド(魔法の絨毯の乗り心地)」といわれ、それまでのスプリングなどを用いたサスペンションとは別次元の感覚をユーザーにもたらしたのです。

コイルサスでもない、エアサスでもない「オイルサス」⁈

一般的な「コイルサス」の場合、ホイールハウスの中をのぞくと太い鋼材で作られたスプリングを見つけることができます。しかしハイドロの場合、このスプリングは用いていません。では現代の高級車に多く用いられる「エアサス」なのかといえば、そうともいえません。ハイドロはオイル(油圧シリンダー)とエアスプリングを組み合わせたハイブリッドサスペンションなのです。乗り心地としては「ウォーターベッド」を想像していただくと良いと思います。ゆらゆらと「柔らかい」けれども、常に「フラット」な状態を保って姿勢を一定に保つ。イルという液体を用いているがゆえ、他のサスペンションシステムでは味わえない独特の乗り心地を提供するのです。

基本的にミニのサスペンションは「ゴム」⁈

一般的なクラッシック・ミニのサスペンションもコイルサスではありませんでした。スプリングの代わりに「ゴム」を用いていたのです。

アレックス・モールトン博士が開発した「ラバーコーンサスペンション」

BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)のエンジニアだったミニの生みの親、アレック・イシゴニスは、それまでの小型車(モーリス・マイナーなど)よりも更に小さく、しかも大人が4人乗ることができるニューモデルの開発を命じられていました。超小型のボディサイズで大人4人が乗車するためには、エンジンルームを極力小さくするしかありません。そこでイシゴニスは「イシゴニス・レイアウト」と呼ばれる、エンジンの下にトランスミッションを配置する画期的な方式を開発しましたが、それでもサスペンションを配置するスペースが取れずに悩んでいました。そこに現れたのがイシゴニスの友人であるアレックス・モールトン博士です。家がゴム製品の製造会社であり、またタイヤメーカーのダンロップのエンジニアだったモールトン博士は、ゴムの塊をスプリングの代わりに用いる独自のサスペンションシステム「ラバーコーンサスペンション」を開発。
MINIのサスペンション問題を一気に解決したのです。

ラバーコーンサスペンションの硬い乗り心地ハイドロで改善

ラバーコーンサスペンションはスプリングの伸び縮みの代わりにゴムの弾力で路面からの衝撃を吸収する仕組みです。そのためコイルサスに比べると乗り心地が「ゴツゴツ」するのが難点でした。そこで上級モデルには「魔法の絨毯」ことハイドロニューマチック・サスペンションを採用することにしたのです。このハイドロサスの乗り心地は多くのユーザーに好意的に迎えられましたが、その一方で複雑な構造のために重量とコストがかさむという難点がありました。また超小型のボディサイズであるミニの場合、ピッチング(揺れ)の制御が難しいという問題もありました。そのためMk Ⅲの生産終了を最後に、元のラバーコーンサスペンションに戻されてしまうのです。

ハイドロサスペンションが採用されたミニ一覧

  • 997ccのクーパーの一部
  • 1071S(クーパーS)の初期モデル

1964年9月〜

  • 997ccのクーパーの一部
  • 907sの(クーパーS)の一部
  • 1275S(クーパーS)の一部

※1969年11月からはコストダウンのため1275S(クーパーS)のみ

1971年6月 Mk Ⅲ生産終了と共に廃止、全てラバーコーンサスペンションとなる。

まとめ」

現在ではシトロエンでもハイドロを使った車は生産されていません。しかしその独特の乗り心地が忘れられず、程度の良い中古車を求めるカーマニアガイルのも事実です。そんな中、シトロエンよりも圧倒的にレアな「ハイドロ・ミニ」に乗っていたら、多くのカーマニアから羨望の眼差しを受けること間違いなしです。もし興味のある方は、探してみてはいかがでしょうか。




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