クラシックBMW

第一次世界大戦中の1916年に創業したBMWには100年を超える長い歴史があります。
その間には2020年のオークションで2億4000万円の値がついた幻の名車「507ロードスター」を始めとする、自動車史を彩る傑作カーが数多く生み出されてきました。
今回はそんなBMWのクラッシックカー、BMWのレジェンドたちをご紹介してまいります。

戦前のクラシックBMW

BMW初の4輪自動車「Dixi 3/15PS(BMW Dixi)」(1929年)

それまで航空機用エンジンメーカー、バイクメーカーだったBMWが初めて4輪自動車として発売したのが「Dixi 3/15PS(BMW Dixi)」です。
ただこの車はBMW自身が開発したものではなく、イギリスの自動車メーカーオースチンからライセンスを受けて生産されたものでした。
一刻も早い4輪自動車生産を目指していたBMWは、「オースチン・7」のライセンス生産車であるディクシーの製造権を持っていた「アイゼナハ車両製作所」を買収。
ライセンス生産の権利を手に入れたというわけです。
ただすぐれたエンジニア集団であったBMWは、このライセンス生産によって4輪自動車の技術を習得、そして更に発展させ、それからわずか3年後の1932年、完全自社設計・開発の「3/20 AM1」を発表します。

キドニーグリルの始まり「BMW 303」(1933年)

「3/20 AM1」の翌年にジュネーブショーで発表された「BMW 303」はBMWにとって記念すべき一台。
BMWのシンボルである「キドニーグリル」が初めて採用されたモデルだからです。
そしてBMWのもう一つのアイデンティティー、直列6気筒エンジンが初めて採用されたのもこのBMW 303でした。

ル・マンやミッレ・ミリアで大活躍!「BMW 328」(1938年)

戦前のBMWにとって一つの到達点となり、「駆けぬける歓び」の原点となった傑作スポーツカーが「BMW 328」です。
空力に優れたボディに直列6気筒OHV 1971ccのエンジンを搭載し、戦前の自動車であり、そして最初の4輪自動車生産からわずか10年弱で生産された車でありながら最高時速150kmを叩き出しました。
もちろんル・マン24時間やミッレ・ミリアといったレースでも大活躍。その圧倒的なスピードで、数々の記録を塗り替えていったのです。

戦後のクラシックBMW~ノイエ・クラッセ

ドイツ敗戦後の低迷期を支えた名車からBMW復活の礎となったノイエ・クラッセまでを紹介いたします。

小さなカルトカーがBMWを救った「イセッタ」(1955年)

1950年代初頭、BMWは第二次世界大戦によるドイツの東西分裂、また自身の高級車路線の失敗により経営難に陥っていました。
またドイツ国民も経済的に困窮し、とても高級車を購入できる状況ではありませんでした。
そんな時に登場したのがイタリアのイソ社からライセンス提供を受けた「イセッタ」です。
卵形の超小型ボディにフロント部分がそのままドアとして開くユニークなデザインのカルトカーは、VWビートルよりも安価ということもいうこともあって大ヒットしました。
現在ではスイスのEVメーカー「マイクロモビリティ」社からイセッタをオマージュした「マイクロ・リノ 2.0」というEVが販売されています。

超弩級の高級スポーツカー「507ロードスター」(1956年)

150馬力を発生するV8 3.2Lエンジンをフロントに収め、最高時速は220km/h、0-100km/h加速は11.5秒と、1950年代当時としては超弩級の高性能を誇った伝説のスポーツカーが「507ロードスター」です。
ライバルであるメルセデス・ベンツの「300SL」と覇を競いましたが、あまりに高価だったため生産台数は251台と「幻の名車」となりました。
その希少性は2020年におこなわれたオークションでは最高額の2億4000万円で取引されたほどです。
※ちなみにZ8はこの507ロードスターへのオマージュだといわれています。

BMWの復活はここから始まった「ノイエ・クラッセ(BMW1500)」(1961年)

高級車指向というマーケティングの失敗で経営難に陥っていたBMWが本格的に復活したのはこの「ノイエ・クラッセ(BMW1500)」のおかげといわれています。
「ノイエ・クラッセ」、英語に訳すと「ニュー・クラス」と呼ばれたこの車は、新しい時代を感じさせるモダンなデザインと、BMWらしい卓越したハンドリングで自動車評論家から大絶賛を得、ユーザーからも歓びを持って迎え入れられました。
「運転の楽しいスポーティーセダン」というBMWのコンセプトはこのノイエ・クラッセから始まったのです。

「マルニ・ターボ」と「ビックシックス」

この2台は現在の3シリーズや5シリーズ、6シリーズの直接の祖となる名車です。

マルニ・ターボ「BMW2002 Turbo」(1973年)

70年代のスーパーカーブームで人気を博し、現在でも高い人気を誇るのがマルニ・ターボこと「2002 Turbo」です。
1968年に発売されたノイエ・クラッセの後継車2002をベースにターボチャージャーを搭載。
大きく張り出したオーバーフェンダー、エアダムスカートに鏡文字(前を走る車のバックミラー越しに写ると正しく読める反転文字)で書かれた「Turbo」の文字は迫力満点で、ドイツレーシングカー選手権での活躍もあって「走りのBMW」を強く印象づけました。

世界一美しいクーペ「BMW3.0CS」(1971年)

キドニーグリルと共にBMWの代名詞となっているシルキーシックスこと「直列6気筒エンジン」。
その元祖が「世界一美しいクーペ」と呼ばれた「3.0CS」に搭載された「ビッグシックス」です。
スポーツ・クーペのパイオニアとなったこの3.0CSはその後200kgもの軽量化を図られた「3.0CSL」(Lはドイツ語で軽さを表す「Leicht」の意味)に進化。
DTM(ドイツツーリングカー選手権)の前身であるドイツレーシングカー選手権で大活躍しました。

全てのクラシックBMWが現在につながっている

1920年代から70年代にかけてのBMWのクラシックカーをご紹介してきました。
こうして一気に見てみると、BMWは昔から一貫して「駆けぬける歓び」を追求してきたことが分ります。

BMWのハンドルを握るとき、これらの「ご先祖様」にちょっと思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

ライター情報

BMW Column編集部

BMW Column編集部です。 このコラムでは、車にまつわる情報、BMWに関する面白くてタメになる知識を発信していきます。ぜひ更新を楽しみにしていてください♪