エンジンの縦置きと横置きはどう違う?

自動車雑誌などでよく「直6を縦置きにレイアウトして」とか、「FF横置きエンジン」などという記述を目にします。
この「縦置き」「横置き」というのはエンジンのレイアウト方式のことなのですが、両者にはそれぞれメリット・デメリットがあり、また向いている車種も異なります。
そこで今回は縦置きエンジンと横置きエンジンの違いやメリット・デメリット、またそれぞれを採用している代表的な車種などをくわしくお伝えしてまいります。

「縦置き」「横置き」ってどういうこと?

「縦置き」エンジンとは、エンジンの動力を伝えるクランクシャフト(回転軸)が車の正面から見て「縦方向」に、「横置き」エンジンは「横方向」に配置されているレイアウトのことをいいます。

なぜBMWはほとんどの車種が「縦置き」なのか?

ちなみにBMWでは、1シリーズやX1など一部のFF車を除いてほとんどの車種が縦置きレイアウトを採用しています。
ではなぜBMWは「縦置き」なのでしょうか?

縦置きエンジンは「FR」車と相性が良い

それはBMWのほとんどの車で「FR」(フロントエンジン・リアドライブ)レイアウトを採用していることと関係があります。
先ほどもお伝えしたとおり、縦置きエンジンはクランクシャフトが縦方向に伸びているため、そのまま延長して後輪に動力を伝えやすくなっています。
つまり縦置きエンジンはFR車と相性が良いのです。
一方FRレイアウトで横置きエンジンを採用すると、横方向に伸びたクランクシャフトの動力を、「方向転換」して縦方向に変換し後輪に伝えなければなりません。
そのため「一手間」かかってしまい効率が悪く、横置きエンジンとFR車は相性があまり良くないのです。

しかし後輪に動力を伝える必要の無いFF車と横置きエンジンの相性はバッチリで、例えばBMWでも1シリーズのようなFF車の場合は横置きレイアウトを採用しています。

縦置きエンジンのメリット・デメリット

縦置きエンジンのメリット

縦置きエンジンは車のパーツの中でもっとも重いエンジンを重心に近い場所にバランス良く配置できるため、余計な遠心力などがかからず、コーナーでの安定性が増し、ハンドリングが向上します。
また直6エンジンなどの「長さ」のあるエンジンを搭載する場合、横置きだと「車幅」という制限があるため難しくなります。
縦置きの場合はそのような制限がないため、大きな多気筒エンジンでも容易に搭載することが可能です。
さらにはエンジンの左右にスペースを確保することができるので、サスペンションの選択肢も増えます。

縦置きエンジンのデメリット

縦置きエンジンは横置きに比べエンジンルームの「長さ」が必要となるため、その分車内空間が狭くなってしまう傾向があります。
全長の大きな中~大型車の場合はエンジンルームが大きくても車内空間をキープできるため問題ありませんが、コンパクトカーではこの点が問題となります。
またエンジンルーム内に「クラッシャブルゾーン」を確保しにくいため、衝突安全性を高めるのが難しいという点もデメリットとなります。

縦置きエンジンの代表的な車

「駆けぬける歓び」をテーマとするBMWは基本的に「縦置き&FR」を採用しています。
またCクラス以上のメルセデス・ベンツや、アストン・マーチンのようなFRスポーツカーの多くも縦置きエンジンです。

横置きエンジンのメリット・デメリット

横置きエンジンのメリット

横置きの場合、エンジンとトランスミッションをコンパクトにエンジンルーム内に収めることができます。
そのため全長の短いコンパクトカーでも車内空間を広めに取ることが可能になります。
またエンジンルーム内に「クラッシャブルゾーン」を設けやすいため、正面衝突時の安全性確保が容易というメリットもあります。

横置きエンジンのデメリット

エンジンを横置きにすると左右の重量バランスを取ることが難しく、縦置きエンジンに比べるとどうしてもハンドリング、コーナーリングの面で劣ります。
また「車幅」というスペースの制限があるため、大排気量、特に直列エンジンなどを搭載するのには向いていません。
更にエンジンルーム内の横方向をエンジンが占有してしまうため、サスペンションの選択肢が限られてたり、ハンドルの切れ角が制限されて最小回転半径が大きくなってしまうというデメリットもあります。

横置きエンジンの代表的な車

コンパクトカーの代名詞であるMINIやVWのゴルフやポロ、ルノー、プジョー、シトロエンといったフランス車は横置きエンジンを採用しています。
また国産車でもトヨタのヤリスやホンダのフィットといったコンパクトカーや軽自動車のほとんどは横置きエンジンレイアウトです。

ユニークなレイアウトを採用する車

相性の良い組み合わせで考えると
縦置きエンジン+FR
横置きエンジン+FF
といったレイアウトになるのですが、各自動車メーカーの考え方や事情によってユニークな組み合わせを採用している場合もあります。

アウディはFF車でも縦置きエンジンを採用

アウディはクワトロ(フルタイム4WD)を主力としており、後輪に動力を伝える必要があるため基本的に縦置きエンジンを採用しています。(A3などのコンパクトカーは横置きエンジン)
そのためクワトロから後輪駆動をカットしたFF車でもそのまま縦置きエンジンを組み合わせているというわけです。

スポーツカーでも横置き⁈「横置き+ミッドシップ」

ハンドリングやコーナーリングを重要視するスポーツカーの多くは縦置きエンジンを採用していますが、量産FF車用のエンジンを流用して作られたミッドシップスポーツには、
横置きエンジン+ミッドシップという組み合わせも存在します。
トヨタのエンジンを流用しているロータス・エリーゼや、FF軽自動車のエンジンを流用しているホンダ・S660などが有名です。
(ちなみにピュアスポーツカーであるフェラーリでも、ディーノ、308、328などは横置きエンジンです)

まとめ

縦置きエンジンの3つのメリット、
コーナーリング、ハンドリングの良さ
直6エンジンなどが搭載しやすい
サスペンションの選択肢が多い
はどれも走りに関係するものばかり。
それゆえ「駆けぬける歓び」をテーマとするBMWのほとんどが縦置きエンジン+FRというレイアウトを採用するのも納得です。
同じグループであるコンパクトカーの代名詞MINIが横置きエンジン+FFを採用していることと比較すると面白いですね。

ライター情報

BMW Column編集部

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