BMW”らしさ”を生み出すデザインの特徴

セダンの「3シリーズ」やSUVの「Xシリーズ」、オープンモデルの「Zシリーズ」。「BMW」と聞くと、人それぞれ思い浮かべるモデルが異なると思います。

けれど形は違えども、どのシリーズもひと目見るだけですぐにBMWだとわかるデザインをしています。

BMWでは独自の”らしさ”を表現するために、随所に独創的なデザインが取り入れられています。

そこで今回は、BMW”らしさ”を持つデザインがどのように生み出されるのか、どのようなものなのかについてご紹介していきます。

見て聞いて感じるBMWのデザイン哲学

BMWのエクステリアデザイン部門の最高責任者クリストファー・ヴァイル氏はこう言います。

「20m離れたところから見た際に、たとえロゴを隠していたとしてもBMWの車であるということがわからなければならない」

エクステリアやインテリアだけではなく、エンジン音や乗り心地からもBMW”らしさ”を感じ取れるようにデザインしなければいけないと提言しています。

このように、BMWのデザイナーは非常に高い志を持って車の設計に関わっているということが伺い知れます。

BMW”らしい”車が生み出されるまでのプロセス

BMWでは、新型の開発や既存車種のモデルチェンジの際に、複数の社内デザイナーによるデザインコンペが行われます。

これは、あえて複数のデザイナーを競わせることで、より良い製品が作り出されるという考えがあるからです。

そして厳しいコンペを通過したデザインだけが、市販化へのプロセスを進めていくことができるのです。

また、BMWのデザインプロセスは以下のように分けられます。

  1. トレンドの見極め
  2. 手書きスケッチの作成
  3. テープ・ドローイングで実物大を確認
  4. デジタル技術で細部のデザインを作成
  5. クレイモデルの作成
  6. インテリアデザインの作成
  7. 各部門で詳細部分を微調整

ただしこれらのデザインプロセスがスムーズに次の段階へ移行できるとは限りません。

進行中に何度も繰り返し調整を行い、年単位の時間をかけ、ようやく公に姿を表すことができるようになります。

こののBMWのデザイン・センターは、ドイツのミュンヘン、中国の上海、米国カリフォルニア州のニューベリー・パークの3ヶ所に存在します。

BMWのデザインには日本人デザイナーも関わっている

実はBMWのデザイン部門には、日本人デザイナーも関わっています。

1988年にBMWのデザイン部門に入社した永島譲二氏は「Z3ロードスター」や「5シリーズ」、「3シリーズ」やコンセプトモデルなど、様々な主要モデルのエクステリアデザインを担当しています。

中でも永島氏が関わった代表的なモデル「Z3ロードスター」は、元々クレイモデラーの練習台としてデザインしたものが社内のデザインコンペで見事採用。市販化へと至りました。

そして1996年に永島氏がデザインした「Z3ロードスター」が日本にも導入されると、特徴的なロングノーズ、ショートデッキのデザインを持つコンパクトオープンカーとして注目を集めました。

「Z3ロードスター」は映画007の「ボンドカー」としてスクリーンデビューも果たしています。

BMW”らしい”ボディの特徴

量産車のデザインは、美しさや格好良さといったビジュアル的な魅力だけではなく、機能性や安全性、作りやすさなどといった、製品として求められる基準もクリアしなければいけません。

そのような様々な制約がある中でもBMWは、随所に独創的なデザインを取り入れることで、よりBMW”らしい”車を表現しています。

ここでは、そのBMW”らしい”代表的なデザインをご紹介していきます。

ロングノーズ・ロングホイールベース・ショートオーバーハング

BMWの各モデルを横からご覧いただくと、車体全体がゆったりしている印象を受けると思います。

これはボンネット部分を長くした「ロングノーズ」と、ホイール間の距離を長くした「ロングホイールベース」という車体設計であるためです。

「ロングノーズ」は縦置きエンジンを搭載する目的を持ちますが、優美さとプレミアム性を感じさせるデザイン上の効果があります。

また、「ロングホイールベース」は走行安定性を高める効果以外に、広々とした室内空間を連想させる視覚的な効果もあります。

ほかにもFRモデルでは、ノーズが軽くスポーティな印象になるように、ホイールより前方を短くした「ショートオーバーハング」が採用されているのも特徴です。

ズィッケ・ライン

フロントライト上部からリアライトまで一直線に伸びるプレスラインは「ズィッケ・ライン」と呼ばれています。

1950年代から登場し、70年代にかけてBMWの象徴として認められると、一時期は全てのモデルで採用されていました。

※2000年代からは、あえて「ズィッケ・ライン」を採用していないモデルも登場しています。

「ズィッケ・ライン」は元々曲面の強度を増す目的で付けられましたが、このラインがあることでサイドビューにメリハリが生まれます。

また、最近は「ズィッケ・ライン」にあえてRを付けたり一直線にしたりと、車のイメージに合わせて微妙にデザインが加えられています。

ちなみに「ズィッケ」はドイツ語で「ひだ(襞)」の意味を持ちます。

キドニー・グリル

左右対称に広がる幅広の網目状のグリルは、「キドニー(肝臓)・グリル」と呼ばれており、BMWを印象付ける最も重要なデザインとして受け継がれています。

これまで販売されてきたほぼ全てのモデルで採用されているのはもちろん、構造上大型グリルを必要としないBEVモデルに対しても「キドニー・グリル」が取り入れられています。

また、近年は冷却技術の発展によりグリル形状に自由度が生まれてきたため、あえて横長や縦長にしたりと、各モデルのデザインに合わせて最適化されるようになりました。

さらに最近は、グリルの外枠をライトアップする「アイコニック・グロー」を搭載するモデルも増えてきました。

ホフマイスター・キンク

リアドアのCピラー付け根が跳ね上がるような特徴的なラインは「ホフマイスター・キンク」と呼ばれています。

Cピラーをあえて跳ね上げることでメリハリが生まれ、サイドやリアから見た際に全体の印象を引き締める効果があります。

一部採用されていないモデルもございますが、こちらも視覚的な効果が大きいため、サイドから見た時に、すぐにBMWだと気が付くことができます。

ちなみに「ホフマイスター・キンク」の名前は、発案者であるBMWのデザイナー、ヴィルヘイム・ホフマイスター氏の名前と、ドイツ語の「キンク(ねじれ、折れ目)」が合わさって出来ました。

エンジェルアイ・ヘッドライト

ライトの周囲を囲むようなリング状のポジションランプは「エンジェルアイ・ヘッドライト」と呼ばれています。

ちなみに名前の由来は「天使のリング」のように円形に光るためです。

ただし、最近はLEDやレーザービームが採用されるようになり、それに伴いポジションランプが円形からヘキサゴン形状へと変化しています。

これにより「エンジェルアイ・ヘッドライト」が点灯すると、よりフロント周りがキリッとした見た目になるようになりました。

L字型テールライト

車体の外側付近でL字のように折れるテールライトはリア周りをワイドに見せる効果があり、後ろから見た際にBMW”らしさ”を表現するのに一役買っています。

最近はLED化によってライト本体が薄型化されたりL字以外の形状に変更されたりと、すっきりとした印象を与えるタイプも出てきました。

ただし形状が変更されていたとしても、点灯した際にL字型に光るように設計されているモデルもございます。

決して目立つ部分だとは言えませんが、粛々と受け継がれ続けているBMW”らしい”デザインであるのは間違いないでしょう。

まとめ

100年以上の歴史を持つBMWは、これまでに数々の名車を生み出してきました。

今回ご紹介したように、ひと目見てBMWだとわかるデザインには随所でオリジナルな部分が沢山ございます。

今回ご紹介したBMW”らしい”デザインを頭に入れた上で各モデルをご覧いただくと、また新たな発見があるかもしれません。

Shonan/Toto BMWの各ショールームでは、現行の様々なモデルを展示しております。

ぜひお気軽にショールームへと足を運んでいただき、じっくりと実車をご覧ください。

ライター情報

BMW Column編集部

BMW Column編集部です。 このコラムでは、車にまつわる情報、BMWに関する面白くてタメになる知識を発信していきます。ぜひ更新を楽しみにしていてください♪