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向かい合った青と白の四分円と、それを囲む黒いリング。
多くの人に愛されているBMWのロゴは、時代に合わせた改訂を繰り返しながらも、基本コンセプトは大きく変わることなく現代に引き継がれています。
実はこのBMWのロゴの意味には2つの説があり、長年議論が繰り返されてきた歴史もございます。
この記事では、BMWのロゴの意味や由来、誕生から現在までの歴史についてご紹介していきます。
BMWの成り立ち
100年以上もの間BMWの象徴として存在するBMWのロゴはどのように誕生したのでしょうか。
まずはBMWの成り立ちや、ロゴの関係についてご紹介していきます。
元々は航空機エンジンを製造するメーカーだった
BMWの誕生は1916年。第一次世界大戦の時代まで遡ります。
当時のドイツは中央同盟国として参戦しており、軍用航空機の製造が盛んに行われていました。
当時のバイエルンのミュンヘン郊外には、航空機を製造するグスタフ・オットー航空機工業社(Gustav Otto Flugmaschinenfabrik(GOF))と、エンジンを製造するラップ原動機製造所(Rapp Motorenwerke(RM))がありました。
しかし1916年にグスタフ・オットー航空機工業社(GOF)は経営が破綻。政府の要請でバイエルン航空機製造会社(Bayerische Flugzeug-Werke AG(BFW))社と合併し、社名を「BFW」に変更します。
また、1917年にはラップ原動機製造所(RM)は社名をバイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケ(Bayerische Motoren Werke GmbH(BMW))に変更し、1922年にBMWの社名とエンジン製造事業をバイエルン航空機製造会社(BFW)に移管 します。
このように、BMWの始まりはバイエルン航空機製造会社(BFW)の誕生である1916年 ということになります。
第一次世界大戦後は2輪や4輪事業へ転向
BMWとして再出発した当時の事業内容は、ドイツ空軍向けの航空機用エンジンの製造とメンテナンスが中心でした。
しかし1918年に第一次世界大戦が終結し次第に軍用航空機の需要が無くなると、BMWは1922年には2輪メーカーへと転向。
1928年には「アイゼナハ自動車製作所(Fahrzeugfabrik Eisenach)」を買収し、4輪事業 へと舵取りを行います。
BMWのロゴの意味と由来
BMWとしての発足当時は航空機の事業が中心であったため、ブランドを認識させるエンドユーザーがいなかったため、シンボルやエンブレム自体が存在しませんでした。
しかし将来的に自動車や農業、船舶用エンジンの製造も視野に入れていたBMWは、同1917年に前身である「ラップ原動機製造所」時代のロゴデザインをベースに、新しいBMWのロゴを発表します。
初代のBMWのロゴは「ラップ原動機製造所」時代の太い黒外周の上部に「BMW」の文字を入れ、ゴールドの縁取りや中心の青と白の四分円を新しく実装しています。
そしてこのロゴの中心にある青と白の四分円が何を意味しているかについて「プロペラ説」「バイエルンの州旗説」2つの説が生まれ、長年議論が続けられてきました。
プロペラ説
「飛行機のプロペラと青空と白い雲をかけ合わせて作られたデザイン」
誕生当時のBMWは航空機のエンジンを生産していたため、最も多く言われていたのがこのプロペラ説でした。
当時のBMWは「プロペラ説」についての言及を行わず、1929年以降の広告に回転するプロペラの中にBMWのロゴが入った航空機が描かれたものを発表し、そこから人々の間で「プロペラ説」が濃厚になっていきます。
そしてBMWは1942年に自社の出版物にロゴがプロペラであることを裏付ける記事を掲載します。
しかしこの「プロペラ説」は、後にBMWが宣伝のためにあえて残した俗説だったと言われています。
1929年の広告以降広まった「プロペラ説」は、当時の航空機のエンジン開発事業が中心であったBMWのブランドイメージの定着に一役買っていました。
そこでBMWは、あえてプロペラ説を否定することはせず、逆に自社の宣伝にも結びつけていたのです。
バイエルンの州旗説
もう一つの由来は、BMWの故郷であるバイエルン州の州旗をモチーフにした「州旗説」。
青と白の市松模様であるバイエルン州の州旗をRMW時代のロゴの中央にはめ込んだと言われており、現在はこちらの説が濃厚とされています。
ちなみに当時は民間の企業が州や君主の紋章を使用すること自体認められていなかったため、州旗の紋章ルールとは逆の並び順 となっています。
現在までのBMWのロゴの歴史
実はこの象徴的なBMWのロゴは、誕生から現代にかけて様々な変更が加えられています。
- 1917年・・・RMW時代のロゴにバイエルンの州旗。縁は金で上部にBMWの文字。
- 1933年・・・縁やBMWの文字を太く変更。
- 1953年・・・縁を金から白へ、中心の青は水色へと変更。
- 1963年・・・縁や文字の白を太くし、中心の水色は青に変更。
- 1997年・・・エムブレムのような立体的なデザインに変更。
- 2020年・・・黒縁を透明に変更。※デジタル
2020年に発表された最新のロゴは、デジタル化に対応できるようなグラフィックデザインに変更されています。
ただし、こちらはインターネットや各種媒体、モーターショーなどのコミュニケーション媒体向けのもので、車両のエムブレムやディーラーには1997年のデザインのロゴが使用されます。
ちなみに車両に取り付けられているエムブレムのデザインも、いくつかバリエーションがあります。
例えばEVやハイブリッドモデルにはロゴの周りに青縁が追加されており、Mシリーズには「BMW M 50周年記念エンブレム」が付けられているモデル もございます。
BMWのロゴの意味はどちらも正しい
これまでご紹介したことを踏まえて「プロペラ説」と「州旗説」どちらが正しいのかと聞かれたら、後者の「州旗説」と言えるのかもしれません。
しかし現在公開されているBMW公式の見解をまとめると、「プロペラ説」が間違いであるとは言い切れません。
- 1917年のBMW発足時にはオリジナルのロゴが存在しなかった。
- やがてBMWはRM時代のロゴの中央にドイツのバイエルン州の州旗を入れた新しいロゴを発表。
- 1929年の広告でプロペラ説が一気に広まった。
- 当時のBMWはアメリカの航空機エンジンメーカーの委託で新型航空機エンジンを開発していたため、企業のイメージアップとして「プロペラ説」を推し始めた。
元々はRAW社のロゴにバイエルン州の州旗を合わせた「州旗説」が発端でしたが、後に当時の時代のブランドイメージアップとして「プロペラ説」を定着させたということになります。
また、BMWグループ・クラシックのフレッド・ジェイコブズ氏は、以下のように述べています。
「厳密に言うと、BMWのロゴがプロペラに由来するという解釈は正解ではありません。しかし、90年もの間繰り返し語られてきたこの解釈が、やがて都市伝説としてある程度正当化されるようになったのも事実なのです」
このように、BMWは長い間語り継がれてきた「プロペラ説」も間違いではないと発表しています。
そのため、これからも「プロペラ説」「州旗説」2つの説はどちらも正しく、今後も並行して語り継がれていくのではないでしょうか。
BMWのロゴは時代に合わせて変化を繰り返していますが、基本的なコンセプトは今も昔も変りません。
これからもBMWの想いと共に受け継がれていくのは間違いないでしょう。
100年以上続くBMWは、これからも躍動を続けます。