目次
1970~80年代「伝説のM1から初代M3」
70~80年代は、レーシングカーからホモロゲーションモデルとして「公道も走れる究極のレーシング・スポーツカー」が生み出された時代です。
伝説の「M1」
M1はグループ4およびグループ5シルエットフォーミュラ(後のグループC)を勝つために開発され、1978年秋のパリサロンで発表されました。
「羊の皮を被った狼」初代M5
M1ゆずりの3.5Lの直6エンジンを4ドアサルーンである5シリーズのボディに押し込み、サスペンションやブレーキにチューニングを加えたのが「羊の皮を被った狼」と呼ばれた「初代M5」です。
1984年に発表された初代M5は286psを発生。最高速度は250km/hに達し、「世界最速の4ドアサルーン」の名を欲しいままにしました。現在発売されているMモデルはここに始まります。
初代 E30 M3
Mモデル史上最もレーシーで、過激、純血モデルといえるのが1986年に
発売された「初代M3」です。
E30型の3シリーズをベースとしながらも、共通するパーツはボンネットとルーフパネル、ドア内部パネルのみで、後は専用品を開発 するという徹底ぶり。M1に搭載されていた3.5L直6エンジンから2気筒を切り取った2.3L直4エンジンをフロントに配置し、太いタイヤを納めるためのブリスターフェンダー、空力を考慮した大型のリアウイングは迫力満点でした。
「サーキット走行をしてそのまま自走で自宅へ帰る」というユーザーの夢をかなえるマシンが誕生したのです。
1990~2000年代
「ダブルVANOS-リッター100psオーバーへの挑戦」
90年代に入ると、社名変更したBMW M社はMモデルの更なる高性能化と、それまでのレース直系の荒々しさを洗練させる作業に取りかかります。
2代目 E36 M3
ロードゴーイングカー(公道を走ることのできるレーシングカー)だった初代M3に比べ、1992年に発表された2代目M3(E36)は洗練されたグランツーリスモ的性格も併せ持つ1台となりました。
エンジンは3.0L直列6気筒のS50B30型となり、初代M3のような派手なブリスターフェンダーやリアウイングは装着されず、「ジェントルなM3」に変貌を遂げたのです。
しかし初代M3の過激さがまだ記憶に残るユーザーからは「大人しすぎるのではないか?」という声もありました。
そこで1995年にマイナーチェンジが行われ、新たに3.2LのS50B32型エンジンを搭載。
このエンジンは低回転域のトルクと高回転域のパワーを両立させる「ダブルVANOS(バノス)」を採用し、リッター当たりの馬力が100psを超える321psを発生したのです。更に1997年にはBMWがF1で培った技術をフィードバックすることによって生まれたセミATのSMG(シーケンシャルMギアボックス)を世界で初めて採用し、走りのパフォーマンスを求めるユーザーを唸らせました。
E46 M3の登場と「CSL」の復活
2代目M3はどちらかというとグランツーリスモ的性格の強い安定志向なものでしたが、2000年に登場した3代目E46のM3は初代M3に「先祖返り」し、過激なパフォーマンスを発揮します。
S54B32型直6エンジンは、3.2Lという大排気量ながら8000回転超までよどみなく吹け上がり、343ps/7900rpmの最高出力と365Nm/4900rpmの最大トルクを発生しました。
BMWの6気筒エンジンといえば、「シルキーシックス」と呼ばれる滑らかな回転が特徴ですが、このS54B32型はその正反対、「ギャウギャウギャウ」という獰猛な音を立て野獣の様に加速し、M3ファンを歓喜させたのです。
更に2003年には70年代にツーリングカー選手権を席巻した伝説の3.0CSLの名前を受け継ぐ「M3 CSL」が誕生。
カーボン製ルーフパネルの採用や遮音材・電動シートの廃止などにより、ノーマルのM3よりも約110kgもの軽量化を達成し、究極の走りを実現させました。
F1譲りのV10エンジンを積んだM5
2005年にデビューした4代目M5は、当時参戦していたF1マシンの技術をダイレクトにフィードバックさせた「V10」エンジンを搭載し、なんと507psを発生しました。
外見はビジネスパーソンにピッタリの端正な4ドアセダンでありながら、フェラーリやランボルギーニといったスーパーカーを軽々と追い回すことができる性能を持つ、今日のハイパフォーマンスカーの先駆けとなるモデルとなったのです。
Xシリーズなどへの拡大
2000年代後半になると高級SUVの先駆けとなったX5を始め、クーペ
スタイルSUVのパイオニアX6にもMの走りが求められ始めます。
そこで2009年にX5MとX6Mをリリース。その後他のXシリーズにも拡大されていくのです。
2010年代~現在「M2からM8グランクーペまで」
2010年代になるとユーザーニーズの細分化によって増加したBMWのラインナップに応じ、Mモデルもそのラインナップを拡げていきます。
また通常モデルとMモデルの間に「Mパフォーマンスモデル」が設定されたのもこの頃からのことです。
初代M3の再来「M2」登場
M3やM4がモンスターマシン化する中で、2002ターボや初代M3の様なコンパクトで「キレ」のあるマシンが欲しい!
そんなユーザーニーズに応えるために2016年にデビューしたのがM2クーペです。
特に2018年に登場した「M2コンペティション」はM4クーペなどと同じく、M社が開発したS型エンジンS55を搭載。
初代M3の再来を思わせる、過激な1台となっています。
Mモデルは更にサーキットを目指す!
一般モデルとMモデルの間に設定されたMパフォーマンスモデルの登場により、M4クーペなどのモデルは更に尖ったサーキット仕様のモデルにシフトしていきます。
M4クーペやM5に設定された「コンペティション(競技の意)」モデルは、まさに公道も走れる究極のレーシング・スポーツカー。
M5コンペティションに至っては、4.4L、V8ツインパワーターボから最高出力625ps/5600-6700rpm、最大トルク750Nm/1800-5600rpmという途方もないパワーを発し、その走りの真価は最早サーキットでしか確かめることができないほどです。
トップ・オブ・M「M8グランクーペ コンペティション」
究極の走りを実現する一方で、ユーザーを満足させる究極のラグジュアリーを実現するのも現代のM社の役割。
「M8グランクーペ コンペティション」は、スポーツ性とエレガンス、
2つの究極を高い次元で融合させた究極の1台、トップ・オブ・Mと呼ぶに相応しいモデルです。